Selfishness
1.

 逢いたい。
 本当は何時も、何時でも側にいて欲しい。
 なのに、それは叶わない。
 本当に淋しくて堪らない時にだけにしか、その願いは叶わない。
堪え切れなくなるまで待たないと、彼の人は来てはくれない。
「………何故だ?」
 ポツリと呟きが零れる。
 切なさに虚空を睨んでいたセフィロスは、焦れた想いを終に爆発させた。
「オレがこんなに待っているというのに、何時も何時もギリギリの状態にならないと、来ない……っ」

「え…?」
 唐突なセフィロスのその声を、ミッション途中に見出した休憩ポイントで、僅かな休息を満喫していたザックスは耳にした。
「…セ、セフィロス?」
 如何なさいました?
 常に無いセフィロスの焦れた声音に反応したソルジャーたちの、十分恐れを含んだ彼を呼ぶ声にハッと我に返る。

――指揮官たるもの常に冷静で在れ。

 彼の人の言葉を胸の内で反芻し、セフィロスは首を軽く振る。
「…何でも無い…」
 そんなセフィロスを横目で見遣り、ザックスは心の中で深い溜め息を吐き出す。
(煮詰まっちゃってるなぁ、セフィロス…)
 暫く前の話だが、とある事件を切っ掛けに、実はセフィロスには全てを委ねた存在が在る事を知るに至ったばかりのザックスだ。
(とは言え、無理も無いけどさ……)
 蕩けるような眼差しで己唯一人を見詰め、慈しみ、愛しみ。
 最強の武人にして誰もが尊敬と畏怖で見遣る孤高の存在とも言えるだろう英雄を気負う事も無く腕に抱(いだ)く彼の男。
 まるで咽を鳴らす猫のように甘える英雄を目の当たりにしたザックスには、今の彼の気持ちが分からないではない。

――甘ったれの淋しがりやめ。

 あのセフィロスを抱き締め、額に、頬に、唇に啄むように接吻けを落としていたクラウドと言う男の囁きが脳裏に蘇る。
(……ふがっ)
 思い出し頭を掻き毟りたい衝動に駆られる。
 何だか凄く恥ずかしい気分に陥り、視線を英雄から思わず外した。









戯れ言

春頃に書いたお話。
一度小説用ブログにアップしたんだけど、諸事情でサイト停止した時に纏めて消しちゃった代物。
ザックスの気恥ずかしさが伝わってくるでしょうか?(笑)

2005.08.29
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