ゆいいつの

今日、仲間が一人いなくなった。
それは、
大切な大切な、友。
言葉が無くても解り合えると何故か思えた、幾分ぶっきらぼうな性格の流れの傭兵だった若者。
背後を信頼して任せられる、数少ない存在だった。
なのに。
肝心な時に、多分一番何かしなくてはならない時に身体が動かなかった。
出現した存在の、凄まじいほどの威圧感に指一本動かせず、ただ呆然と友が立ち向かい敗れる様を見ているに至った。
何て情けないのだろう。
何て不甲斐ないのだろう。
彼は、シンビオスは、自分が許せなかった。

「…っく」
噛み殺せなかった感情が、喉の奥から漏れ出た時。
「シンビオス様」
扉の外から声が掛けられた。
ハッと我に我に戻ったシンビオスは、キュッと一度目を瞑り、再び開いた時には何事も無かったような微笑を浮かべて扉へ声を向けていた。
「入れ、ダンタレス」
静かな声音に促されてダンタレスは入室して来る。
その表情は、普段は温和な彼からは想像も出来ないほどに堅く引き締められたものだった。
「…やはり、我慢なされておられましたか…」
真摯の眼差しを正面から受け止めたシンビオスは、苦笑を零す。
「何の事だ」
「…解っております、貴方の事は…」
誰よりも。
何よりも。
ダンタレスのその言葉に、シンビオスの面に張り付いていた笑顔が消失する。
作られた笑顔など、彼に通じるはずも無かったのに。
つい、常の癖で表面を装ってしまう自分をシンビオスは嫌悪する。
「…あぁ…」
何時でも、どんな時でも、彼だけは冷静に己を見ていてくれるのに。
だからこそ。
シンビオスは前に進める。
振り返らずに。
苦笑いをしようとして果たせず、シンビオスは歩み寄ってくるダンタレスの首へと手を伸ばす。
「そう、そうだな…」
次第に泣き笑いにも似た様相に変化するシンビオスの面貌に、ダンタレスはそっと己の主君の頬に触れると、緩く、優しく撫で上げた。
その行為を黙って受け入れ、シンビオスは目を細める。
自分が辛く苦しい時、いつも彼は、彼だけは、こうして傍らにいてくれる。
「大丈夫ですよ、きっと…」
ジュリアンは生きています。
最も望む応えを囁くダンタレスの掌がシンビオスの背に回される。
「だから、ご自分を責めないで下さい」
唇が、ゆっくりと降りてくる。
決して苦しくない程度の、けれど強く抱き締めてくれる腕の温もりを感じながら、目を閉じ、重なる唇の感触を快く思う。
「…離れるな…」
お前だけは、私の傍らに在れ。
己の身を委ねながら、熱くなる吐息で彩られた言葉に、ダンタレスは頷いた。
「はい」
どんな事になろうとも。
貴方の御側を離れません。
命に賭けて。
愛しい我が君。
もう一度口付け、ダンタレスは囁く。
己の総べてをこめて。


どんなときも、いてくれる。
決して覆されない、それは真実。
シンビオスはだから、委ねる。
魂までも。
唯一無二なる存在に……


■駄文■
ウマ×ヒトを書こうとして…くぢけました(爆)
や、書けないことはないんですが…書き始めるとエロ大爆走になりそうで…(爆死)
悩んだ挙げ句に、こんなに短い話…ちや師匠、ホントにゴメンナサイです。
この続きは、何れ個人的にって事で…(核爆)

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