ACT.2


 どくん、どくん。
 激しく脈打つ己の鼓動が煩いくらいだ。
 今、己の身に起きているのは、本当は夢なのでは無いだろうか。
 そんな事が思考の片隅を過るのも無理は無かった。
 本当なら有り得ない筈の、現実。
 けれど、己を抱き締めている存在の温もりと、確かな存在感によって、これが紛れも無い真実なのだと知らしめる。
(…レオンの匂いがする…)
 頬を彼の人の胸に押し当てながらぼんやりと思う。
 夢ならば、覚めないで欲しい。
 そんな思いを抱きながら、エルウィンは自然に自らの腕をレオンの背に回す。
 瞬間。
 ビクリ、とレオンの身が震えた。
「エルウィン…」
「ん…」
 少し上擦ったような声音で名を呼ばれ、ゆっくりと顔を上げる。
 紫水晶の真摯な瞳が己を、己だけを映している。
 それだけで心が躍る。
 嬉しい。
 エルウィンの湖水の如くに潤む瞳が、きらきらと輝いていた。
「良い、のか…?」
 尋ねながらもエルウィンの身を離さぬように、先程より幾分腕に力をこめて抱くレオンに、エルウィンは笑みを零した。
「うん、凄く嬉しい」
 こうしてお前に抱き締めてもらえるなんて、思いもしなかったから。
 だからとても嬉しい。
 エルウィンの呟きに、レオンの意識に火が灯る。
「私も…嬉しい…」
 滅多に見れないだろう彼の人の、あからさまな囁きと笑顔は今、自分にのみ向けられている。
 それは何て喜びだろう。
 嬉しくて嬉しくて、でもつい、エルウィンは心の中で思っていた言葉を漏らした。
「夢なら覚めないで欲しいな…」
 その呟きに、レオンは応えた。
「夢などでは無い…」
 囁きが迫る。
 降りてくる吐息。
 期待に胸を焦がしたエルウィンの目が伏せられた。
 唇に降りる快い感触。
 気持ちいい。
 ずっと触れていて欲しい。
 そんな願いに反して口付けは触れるだけのもので終わった。
 残念だな、と思ったのも束の間。
「…これ以上続けると、自制出来なくなりそうだ…」
 苦笑混じりのレオンの呟きを耳にして、
「別に、いいのに」
 エルウィンは思わず呟いた。
 その途端。
 エルウィンの視界がぐるりと廻った。
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げはっ。
また、こんな所で続きかい(爆)
てな訳で次回は「いよいよ」えっちなシーン突入!
馬鹿っぷる振り益々拡大間違い無し!(笑)
どーでも良いけど修羅場中に何しているんだ、自分。
とほほ