ACT.2


 幾度となく剣を交えた。
 果てが見出せないほど傷付け合い、血を流した。
 幾多の戦いを経て、ついに帝王ベルンハルトを追い詰めたエルウィンの前に立ちはだかるレオンの決意を秘めた、痛いほどの眼差しを受け止める。
 最早雌雄を決すしか、術は無い。
「エルウィン…っ!」
 己の名を呼び、その先に続くべき言葉が見付からないのか。
 それとも言い出せないのか。
 くぐもるレオンの唇の動きを見つめ、エルウィンは口許に微かな笑みを浮かべる。
「来るがいい、レオン」
 お前の全てで。
 挑発するようなエルウィンの声音に、踏ん切りがつかなかったレオンの意識に火が灯る。
(敗れはせぬ…っ)
 先祖伝来の愛刀を強く握り締め、彼は青竜騎士団へ最後の命令を下した。
 エルウィンを撃て、と。

 人と魔の垣根を越えたエルウィンの部隊の強さは、彼らの想像を越えていた。
 ある意味、理想的なのかもしれないだろう。
 人か、魔か。
 一方のみではない混成部隊をより良く統制し、かつて大陸最強を謳われた騎士団は瞬く間に壊滅していった。
 残されたのはレオン唯一人。
 己の流した血潮に塗れ、荒い呼吸を繰り返しながらもその闘気は決して衰えてはいない様を見せつける。
 しかし。
 最後の気力を振り絞るかの如くに地を蹴り必殺の一撃を放つレオンの刃は、彼に敬意を表し敢えて魔剣では無く聖剣を構えたエルウィンに食い止められるに至った。
「くっ」
「…これで終わりだ、レオンっ」
 常に冷徹な彼らしくない、激した声音と共に噛み合っていた剣が見る間に押し返され、レオンの身体がその圧力に耐え切れず数メートル後方に吹き飛ぶ。
 その後を一瞬の間に追い、狙い違わず標的の首にラングリッサーを振り下ろそうとした刹那。
 ピタリとその剣先が止まる。
「・・・」
 剣の衝撃で完全に意識を飛ばしたレオンの、血の気を失った美麗の面を暫くの間見下ろしていたエルウィンは小さく息を吐き出すと聖剣を鞘に収めたのだった。
「エルウィン?」
 てっきり首を落とすのではないかと思っていた同胞たちを代表して、その行動を訝しんだヘインが駆け寄って来るより早く、エルウィンは踵を返すと言い捨てた。
「行くぞ」
「…あ、うん…」
 近寄ってくる事を拒絶したようなエルウィンの眼差しに、まるで射竦められたかのように足が止まってしまったヘインは掠れた応えを返すしか出来なかった。


 止めをさされる事の無かったレオンが意識を取り戻したのは、軍編を整えたエルウィンが、ヴェルゼリア城に侵入を果たし、エグベルトとベルンハルトの生命を散らした後の事だった。
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久々に、続きをアップ。
何年ぶりだろー(爆)
しかし、まだまだ本筋に入ってないです。
すんません。